先日の越谷コンサートにご来場下さったファンの方から、うれしい感想を頂きましたので掲載させて頂きます。
新春の初舞台、八重洲ホールでの越谷達之助先生の名曲コンサートに伺いました。
幸運にも重厚なシャンデリアの輝く2階特等席から鑑賞させていただきました。今回は「初恋」誕生のエピソードも披露されるとあって、満席の会場もわくわく感いっぱい!プッチーニ本人が三浦環の「蝶々夫人」を最高のマダムバタフライと絶賛して楽屋を訪れた程という逸話がありますが、その環さん自身が越谷先生作曲の「初恋」を私に歌わせて!と所望したというエピソード。まさに越谷先生の才能と強運を物語っているなぁと深く納得できました。
初恋以外の石川啄木の短歌にも数多く作曲され、短歌の世界から日本の風景、四季や情緒まで、これ程奥深く表現されて、日本って、こんなに素晴らしい文化をもっていたんだと胸がしめつけられるようでした。私は特に「やわらかに柳あおめる」が好きで、何度聴いても、緑の風が吹いてくるように感じてしまいます。
また新南田ゆりさんの声の圧倒的美しさ、心地よさ!体中の琴線が残らず共振しているような、鈴を振ったように隅々まで響き渡る美声は圧巻でした。TV番組・CMソングでも150曲以上歌っていらっしゃるとか、どこか親しみもある歌声で、温かく包み込まれるような幸福感に抱かれました。
「友がみな我より偉く見える日は…」とか「戯れに母を背負いてそのあまり…」とか誰もが知っている詩も、曲となって歌われると、なぜか涙がこぼれ、ぽろぽろと泣けてしまうのは、日本人の心に響く何かがあるから?
そして越谷先生はたぶん、ピアノも素晴らしい弾き手だったのだと思います。歌の合間のピアノ演奏がまた、歌以上に心を歌い上げている!伴奏という域を越えた情景表現の妙=ウルトラC級の難業で魅せていただきました。一曲一曲がまるで懐石料理のように美しく、手が込んでいて、息を詰めて見守り、終わると、ほぉ~と深いため息と共にその世界に酔いしれて味わいました。
2部の今福さんは、青木純師匠の指導のもと、カンツォーネ・コンコルソで優勝した曲から、私もファンですが、リリカルな明るい声が日本歌曲にも意外に合うんですね!声の贈り物という言葉があるとしたら、今福さんの声はきっとそれで、聴く人を元気づけて癒す力を授かっていると思いました。
「野葡萄の紅」で、歌とピアノと朗読の三重奏という構成は、越谷先生ならではの芸術表現ですね。譜を読むように朗読するというのは「間」というか「余白の美」というか、日本の文化がことに大切にしたところの表現でしょうか。越谷先生が青山学院高等部の音楽教師をされていた時代、純さんの歌の才能を見抜いて音楽の道を薦めた経緯を思うと、この朗読の任を与る純さんの胸裏はいかばかりでしょう!まさに、先生の精霊が愛弟子に舞い降りた瞬間だったように感じました。
最後、そんな純さんの指揮で皆で合唱した「初恋」、越谷先生もきっとニコニコしながらピアノの脇で聴いて下さったことでしょう!「越谷先生の曲には、出会った人の人生を変えてしまうくらい不思議な魅力がある」と越谷達之助記念会の会長さんも書いておられますね。私も同感です。今日の演奏者の方々の技量は第一流のものでしたが、越谷先生の芸術性の高さを見事に伝えて下さって、私は日本人に生まれてよかったな~と思える日でした。この歳になると、日常生活にも倦んで鬱々していましたが、今日は久々に泣けて、こんな身近な情景の中にも美しさを見出だすことができるのかと、気持ちが晴々して帰路につくことができました。新春に相応しい、心洗われる素晴らしい会でした。