もう8月になってしまいましたね。これは6月のナポリ演奏旅行の時の話しです。今は日本にいます!ナポリではありません・・・。
6月14日、ラヴェッロからまたナポリに帰ってきた晩、アレッサンドロの盟友で詩人、劇作家のヴィンチェンツォ・デ・スィモーネ(Vincenzo De Simone)さん宅にご招待を頂き、メンバー共々伺ってきました。
相客として勿論アレッサンドロやニーノも来ていましたし、ヴィンチェンツォさんご夫妻のご友人知人も10数名、総勢20数名だったでしょうか。取りあえずまずバルコニーで乾杯。
彼から僕へのプレゼント、自作の幸運を呼ぶ置物を頂きました。勿論僕たちもいろいろ素敵なお土産を持って行きました。僕からの一番の彼へのお土産は実は僕が日本語に訳した彼の詩でした。
去年ナポリで僕のために開かれた歓迎フェスタに出席したヴィンチェンツォさん、僕の歌に感激して、自作の詩を2編プレゼントしてくれました。これに作曲してカンツォーネにして歌ってくれと。詩はナポリ語でしかもかなり観念的な内容で、表現も文学的、日常会話のイタリア語程度の語学力ではかなり難しいものでした。ナポリ出身イタリア人友人の助けを借りてひとまず日本語に訳しましたが、まだ作曲は出来ていません。でもその日本語の訳を持って行って朗読したところ、彼は目を輝かせて聴き入り、大変に喜んでくれました。次回行くときまでには是非曲を付けて歌えるようにしたいと思っています。
さてパーティーは素晴らしいものでした。乾杯した後はまずサロンのピアノを僕が、アレッサンドロがマンドリンを弾き、参加者みんなで何曲も有名なカンツォーネ・ナポレターナを歌って盛り上がりました。
次にヴィンチェンツォの知人のファド(ポルトガルの民族音楽)をやっている二人が、ファドを数曲歌ってくれました。カンツォーネとはまた違う感傷的で透明感のある情緒に酔いました。
その後ヴィンチェンツォの奥さんが次々と美味しい料理をふるまってくれました。食べるのに夢中で写真がないです・・・。
そしてその間昔役者でもあったヴィンチェンツォがヴィヴィアーニというナポリの20世紀前半に活躍した劇作家の劇(ヴィヴィアーニ自身が作詞作曲した歌が挿入されたミュージカル仕立て)から(劇の名前聞き忘れました)主人公のゴミ拾い人夫の長い独白シーンを歌い演じてくれました。セリフはナポリ語であるためほとんど分かりませんでした。しかし断片的に分かる言葉や、彼の素晴らしい演技と歌唱力で主人公の悲しみや喜びがひしひしと伝わり、僕は涙ぐんでしまいました。
この他ゲストの中の、この方もきっと昔は女優をされていたのでは?という雰囲気ある女性が(上の僕がピアノを弾いている写真で、アレッサンドロの横で歌っている方です)次々と味のある歌い方で(声はしわがれ声でしたが)カンツォーネ・ナポレターナを歌ってくれたり、キッチンで料理を手伝っていた奥さんの友人も歌いに出て来てくれたり、もちろん僕や同行の生徒たちも歌い、夜は更けていきました。
夜中12時を過ぎたあたり、ほぼ半数のゲストが帰っていった後、ヴィンチェンツォはバルコニーで、横にアレッサンドロを呼び彼に伴奏してもらいながら、僕一人のために僕の目の前で僕の目を見つめながら、何曲も何曲も僕が聴いた事がない美しいカンツォーネを歌ってくれました。「まだこんな素晴らしい歌がナポリにはたくさんあるんだ!Junにこれらの歌を歌って貰いたい、そして日本でたくさんの人に聴いてもらい歌って貰って欲しい」と。