次の日曜日12日(日)午後2時から東京駅八重洲口前の東京建物八重洲ホールで、ぼくのデビュー30周年記念コンサートシリーズ第1弾として、石川啄木作歌、越谷達之助作曲 歌曲集<啄木に寄せて歌える>全曲演奏会を開催します。ピアノは山季布枝。
<啄木に寄せて歌える>15曲 + 同 歌曲集<日本の哀愁>から3曲 + 同歌曲集<野葡萄の紅>から1曲というプログラムで、<啄木>には越谷歌曲の研究家である海老原幸夫さんの解説があります。また、一曲ごとに歌詞となっている啄木の短歌の、越谷先生自身の朗読(録音)をお聴き頂きます。
今や日本歌曲を代表する名曲となり、多くの人々に愛唱され、愛聴されている「初恋」がこの曲集の1曲目に収められています。そのほか例えば有名な「たわむれに 母を背負いてそのあまり 軽きに泣きて三歩歩まず」とか、主に「一握の砂」から選ばれた短歌15曲に作曲されています。
「初恋」でも分かるとおり越谷歌曲の真髄はその甘く美しくせつないメロディーだと思います。そして、今の作曲家には到底作れない古い日本の文化や風土に立脚した伝統音楽の要素を多く持ち、江戸や明治の香りを持っています。そして先生自らよく言われていた事ですが、越谷歌曲のピアノは【伴奏】ではなく【協奏】であり、歌とピアノがイーブンな関係にあると云う事です。例えば「花」「夜霧」などの華麗なピアノ伴奏は他の日本歌曲には見られない美しさを持っています。
こうした越谷歌曲の特徴を作曲者本人から直接学んだ現役歌手は今やぼくだけになってしまいました。越谷先生から直接ご指導いただき、更に先生の朗読付きでコンサートで歌わせていただいてから丸30年がたちました。
越谷先生は作曲家でありピアニスト(三浦環の伴奏者だった)であったほか、戦前は実はかなり有名な俳優でもありました。その俳優としての台詞の表現方法、あるいは邦楽的な表現方法が大いに先生の歌曲には求められていて、ただ書かれている楽譜を、西洋音楽を学んだだけの知識と技術で楽符通りに歌ったところで越谷歌曲に求められているものは実は十分に表現出来ないのです。その歌い方は音楽大学でも、イタリアに留学しても教えては貰えません。そしてそれは越谷歌曲のみならず、明治生まれの作詞家作曲家達、あるいは現代の作詞家作曲家でも、日本伝統音楽に立脚した作品を書いている人達の作品を演奏するときには必要不可欠なものなのです。
それらは十分ぼくの体にしみ込んでいて、すべての歌を歌うときに役立っているのですが、今でも越谷歌曲を歌うときは、先生から注意を受けた事項をすべて書き込んだ30年前の楽譜を見て勉強し直して、先生の教えを思い出して歌っています。とは言っても30年の時の流れがあり、自分自身すべてにわたって30年前のままではありません。越谷先生が「植えて」下さって、30年間僕の心の中で育ててきた「啄木」を聴いていただきたいと思っています。恐らく皆さんがお聴きになった事がない歌曲の世界を聴いていだだけると確信しています。
なおピアノの山季布枝さんは自分のブログにこのコンサートへのお思いを5月30日と5月31日に書いているので、是非ご参照下さい。
山季さんのブログへはこちらから。
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